草虫こよみ xusa musi coyomi

:::::::::::::::くさ むし そら うみ つち ひかり

死んでのちに

書斎

生前になんどか会ったことのある人の本がもうすぐ出版される。
彼女は膨大なノートを残して、たしか70代後半で死んだ。
その中の江戸時代の俳諧に関する研究が、彼女の知らないところでまとめられたのだ。
わたしは、奇妙な縁で、その本づくりに少しだけ関わった。ほんの少しだけ。
3年にわたる編纂。

身内の人は彼女の研究を理解しないし、それどころかやめてほしいと思っていたようで、彼女のノートはその研究に興味のある他人の手にわたった。
そしてもうすぐ世に出る。

こういうことってあるんだ。

逗子に住んでいた人で、夫はちゃんとした会社の役員をつとめあげた人だったと聞いたような。
ただ確かに覚えているのは、「あっちのことにはとっても淡白だったから、助かったわ」と彼女がいったこと。
最低限の家事しかしないで、あとは自分の興味の研究にあけくれた女。
いってみれば欲望のままに生きたのかもしれないけれど、
でもいつもどこかを押し殺している風だった。
太極拳の名手でもあった。

無声の詩、有声の画。
それが芸術だとか。

明日は逗子に行く。彼女の気配があるだろうか。

musi


  1. 2012/08/23(木) 14:36:54|
  2. からだとこころ