草虫こよみ xusa musi coyomi

:::::::::::::::くさ むし そら うみ つち ひかり

のろのろ歩ける人 

musiの父の幼なじみに、西陣で杼(織物の道具)をつくる方がいて、日本ではもうほとんどその方だけなんでしょう、82歳で現役の職人さんです。

先日、着物を織る作家さんが、ぜひ長谷川さんに杼をお願いしたいというので、わたしははじめて父の友人に電話したのです。こてこての西陣の京都弁で話されるからやわらかなんですが、あまりの腰の低さにびっくり。親友の娘ということはあるけど、でも「なんでもいうておくれやす、手ぇになじむもんをつくらせてもらいますよって」とおっしゃるのです。
いちおうパンフレットもあり、そこから選ぶこともできるのですが、そうでなくてもいいし、使っていって不具合があれば、馴染むまで「なんぼでも調整させてもらいますさかい」というのです。

腰が低いのだけど、これは自信です。確固たる自信がなければ、なんでもつくる、とはいえないですから。

年をとって、体はきつくなるけど、芸は円熟していく。
世阿弥が書いたとされる花伝書そのもの。

そのことを母につたえると、10年ほどまえに父たちの友達グループで旅行をしたとき、いちばん足がのろのろで腰をまげて歩いていたのが長谷川さん。みんなで長谷川さんののろのろ歩きを待っていたくらいだそう。
その友達の中で今はいちばん元気なのが長谷川さんです。
そのグループには、西陣の帯や着物問屋のぼん的人たちもいて、その奥さんたちも我が世の春のような勢いでいらしたけど、みんな没落したそう。
もちろん亡くなった方は半分以上。

こつこつこつこつやってきた長谷川さんは、一生をかけて、ゆっくり歩く練習をしていたのかなあと思います。
そして今の境地にいらっしゃる。

せっかちのmusiもゆっくり歩けるようになろう。
それが2016年の、カメ年でもウサギ年でもない、さる年の歩き方。
人が二本足でたったときの感慨を。

musi
  1. 2015/12/28(月) 20:30:14|
  2. からだとこころ