草虫こよみ xusa musi coyomi

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おじさんのなみだ

「ばあさんはもうだめだ……、っておじさん涙ながすきにー」としげよさんがいった。わたしもおじさんの目がうるんでいるように見えたけど、やっぱり泣いていたんだ。

先週みさちゃんに、おばさんが転んで一週間ほど寝込んでいると聞いた。聞いたのが夕方だったので朝になっておそるおそるお見舞いにいったら、おじさんがぼんやり縁側にいた。その日はあたたかかったけど「ばあさんが転んでから寒くなったよ」とぽつり。
何もする気がしないといって、この世の終わりみたいに困った顔をしている。
娘さんがいらして、これからお風呂に入るのだという。おばさんが動けないとおじさんはお風呂に入れないらしい。
「デイホームに日頃からいってればお風呂もいれてもらえるのに、いきたくないっていうからさ。こういうとき困るよ」と娘さん。おじさんがあんまりもじもじ悲しそうなので、「そりゃあお家のお風呂のほうがいいですよね」とわたしがいったら、おじさんはくちびるをかみしめるような顔をしながら深くうなづいた。
寝ているおばさんと少しお話して、ひとまず退散。骨が折れたわけではないけど肉離れのようになっているらしい。すごく痛いのだそう。

おばさんはいつもと同じようなしゃべり口調だったので、おじさんのほうがどうかしちゃうんじゃないかと心配になった。
それで午後にもういちど様子を見にいったらおばさんがおきあがっていた。
そうしたらおじさんはもういつもの頑固じじいにもどってる。

一週間ぶりにいったら「おじさんより先にはぜったいに死ねないから」とおばさんがいっていた。
そういう気持ちって……帰り道ずっとそのことを思った。

おばさんをお見舞いしたとき、おばさんとおじさんのベッドがぴっちりとなりあわせに並んでいたな。

おじさんおばさん
  1. 2008/12/21(日) 22:12:16|
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